「んぅ……っ、んっ……」



前のより、全然違う……っ。

何回も舌に翠さんの舌が絡みついてきて、全然取れない。

誘うように、口の中を侵食してくる。



「はっ……可愛すぎ」



翠さんの口が離れていって、息を深く吸った。



「い、今……キスするようなムードなんてどこにも……っ」



涙も止まって、ボヤける視界で翠さんを睨みつける。



「えー、キスしたいからに決まってんじゃん? ほんと可愛い」



あまりの言葉攻めに、口をパクパクさせる。



「あ、話が脱線したね。俺が伝えたいのは一つ。───もっと俺のこと頼ってよ」

「え……?」



片脚を私の横に乗せ、頬を柔らかく掴んできた。

いつもの悪い笑みなんかじゃなかった。

優しい、憂いを帯びた瞳。



「俺がいつだって支えるからさ。いつだって頼ってよ。頼り方や甘え方を知らなくても、俺が教えてあげるから。もちろん、幸せもね」

「っ……!」



ドクンッ、と胸が高鳴った。

やめてよ……私なんかに、優しくしないでよ。

私は、幸せになんかなっちゃいけないのに。

この人は───毒だ。