腹黒王子様は、孤独なシンデレラに愛を抱く。

殴りかかろうとも思った。

でも、今殴って婚約が破棄にでもなったら大変だ。

だから抑えようと思っても、拳の動きは止まらない。

机の下から、拳が出そうになったそのとき。



「蓬、もう帰ろうか」

「っ、え?」



迎えに座る翠さんが、立ち上がって私の手を取った。



「何を言ってるんだ翠! お前はまた身勝手なことをするのか!!」



翠さんのお父さんは騒いでいて、状況がマズい。

でも、父親は。



「いいんだよ加賀美さん。二人は学生だ。きっと用事か何かあるんだろう。我々は仕事の話でもしよう」



父親の言葉に、翠さんのお父さんは頷いた。



「ああ、そうしよう。橙華さん……だったかな? 聞いても面白くない話だから、出ていってくれて構わないよ」



翠のお父さんの言葉は、まるで橙華に『出ていけ』と言っているような感じだった。

目に涙を溜めている橙華。

その姿を見るだけで、何もできない。

私はずっと、下唇を噛み締めていた。