「いやぁ、わざわざ来てもらって悪いねぇ」
今日は翠さんを連れて、家に帰ってきた。
父親が橙華に話すときとは違う、猫撫で声のような声。
「いえいえ。まだお義父様と言える仲ではありませんが、どうぞよろしくお願いします」
丁寧な言葉遣い、人当たりのいい笑顔。
完全に、“いい人”を演じている。
「いやぁ、こんな丁寧で素敵な好青年を婚約者にもらうなんて、よかったなぁ蓬」
「はい。私も嬉しい限りです」
適当に返事をして、橙華を探す。
すると、インターホンが鳴った。
「お、“加賀美家の皆さん”が来たようだ」
「……え?」
“加賀美家の皆さん”……?
ご両親だけじゃ……。
「はじめまして、蓬さん」
初めて見た加賀美家の長。
父親より若く見える。
「……チッ」
「え、あ……」
舌打ちした人は、昨日木っ端微塵ほどに言い負かした翠さんのお兄さんだった。
……まさかここで会うとは……。
でも、今喧嘩を売ってくる気はないよう。
まあ親の前で言えないか。



