【side翠】




「そもそも、あなたが翠さんのことを馬鹿にしようと、翠さんはきっと傷つきませんよ。人を傷つける方法も考えられないほど、能無しな方だとは思わず、申し訳ありません……」



そう言う彼女が、かっこよく見えた。

そして、美しくも。



俺は小さい頃から、ほぼ虐待を受けていた。

もちろん蓬の妹ほどではないが、『出来損ない』と言われ続けていた。

もちろん、助けてくれる人などいない。

蓬のような姉か兄がいたらな思ったが、俺の兄は。


『おい出来損ない!!』


親と同じく、出来損ない扱いをしてきた。

実績、能力的には俺のほうが上だが、長男という跡取りの立場を使い、何度だって俺を踏みつけてきた。

傷ついたのは大昔の話だった。

今はもう全然傷つくなんて気持ちがない。

だからこそ、諦めていた。

いつか家から出てやると思って我慢していた。

でも───



「翠さんも苦労してるんですね」

「だからなんだよー」