「名前は蓬? 可愛いな。俺は加賀美柏陽(はくよう)。一応、翠の兄だ」

「すごいイケメンさんですね! たしか今は大学三年生なんですっけ?」

「そうだ! 俺は───」



ここまで来れば、簡単な話。



「なあ、俺と婚約しようぜ」



───きた。



「ごめんなさい、私は翠さんのことが好きなので」



もちろん、こんな言葉で納得してくれるわけがない。



「は? いや、こんなゴミより俺のほうがいいだろ! ぜってぇ」

「───私がイケメンと言ったのは、容姿のことですよ? あなたは心がゴミなので。人のことを出来損ない呼ばわりする権利を持つ人なんて、この世にいませんよ」

「っ、あ!?」



やっと自分の置かれている立場がわかったんだろう。

まあ、そんなので諦めてやるわけないけど。



「そもそも、あなたが翠さんのことを馬鹿にしようと、翠さんはきっと傷つきませんよ。人を傷つける方法も考えられないほど、能無しな方だとは思わず、申し訳ありません……」

「〜ッ……!!」