「あ? 何回言えばわかるんだ出来損ない。お前みたいなゴミ、家に置いてやってるんだけで感謝しろよ」

「今は寮生活だ。もうあんな家に世話になるか」



二人はヒートアップしていて、止めに入ろうと思った。

そして、いいことを思いついた。



「翠さんっ!」

「蓬?」



翠さんの腕に抱きつき、甘い目で“演じた”。

そして、私の計画は順調に進み……。



「誰だ? お前」



お兄さんの視線はこっちに向かった。

……きた。



「私、翠さんの婚約者の九条蓬と言います。申し訳ありません、ご挨拶もなしに」



得意の笑顔で対処すると、こういう男はだいたい落とせる。

案の定。



「お前可愛いな」



案の定、こっちに熱視線を向けてきた。

こういう系統の人は簡単だなぁ。