手を握ってきた翠さんを睨みつける。



「おお怖。大丈夫、昨日の反応で男慣れしてないのはわかってるし。徐々に慣れさせてあげる」

「……そんなの契約にないんですけど」

「本当に契約のことしか頭にないなぁ。規格外なこともするのがラブラブカップルでしょ?」

「発想がキモい」



自然と口から出た言葉に、自分自身が驚いた。

……どうして今、本音が出たの?

いつも他人といるときは、神経を尖らせて、どうすれば気に入られるかを見極めていた。

でも、この人といるときは。

なぜか、そのセンサーが発動しない。



「最近暇だったからさ〜。───蓬のこと、惚れさようと思って」

「っ、え───」



こんな人が“王子様”なんて、馬鹿だ。

……この人は───腹黒なクズ王子だ。



「私絶対、あなたなんか好きになりませんから」

「ふーん。強がれるのはいつまでかな? まあでも、20になったら結婚できるもんね」

「……」

「あれ、無視されちゃった。ははっ、面白いなぁ」



本当、何考えてるかわからない。

あと絶対。


───あんたなんかに惚れないから。