【side翠】




「おい翠、ほんとに婚約すんのかよ?」



蓬と“婚約”をしたあと、泉、綴と生徒会室に残った。

一つ年下の綴は凶暴。

敵と見なした相手には容赦ない。



「本当に婚約しなかったら、この契約書はなんだ?」

「……」



黙った綴の肩に手を置く。



「大丈夫、結婚するくらいだ。心配なんかしなくていい。……まあ、いらなくなったら捨てるけど」



そう言うと、泉がため息をついた。



「彼女よりひねくれているのはあなたですよ。彼女も気づいてるんじゃないですか、あなたが相当ヤバい奴だって」

「泉は主人に向かって生意気だなぁ。でもそのとおりだ。いらないものは容赦なく捨てる。彼女だって例外じゃないだろ。彼女だって自分にいらないものは捨てるタイプだ」



泉は小さい頃からの俺の従者。

“あの頃”から一緒にいて、俺のことを一番知っている。



「……俺、彼女には何か理由があると思います」



泉の言葉に、静かに頷く。



「そんなのは俺もわかってる。───九条家を探れ」



あの目は───普通の目じゃない。