「私には、武器がある。橙華には、それがないのよ。私のせいで、ああなった。私のせいで、あんな目に……っ」



不覚にも、涙が出て“きそう”になった。

でも出ない涙に、ハッとした。

私はもう、泣くことも、できなくなってるの?



「ほら、泣けないじゃん。泣きたいとき、本心で笑いたいとき。そのときに泣いて笑えないなら、もうそれは人間じゃない」

「っ……」



正解だ。

本当に、そのとおり。

私は、感情を失った。

残ったのは、罪悪感と怒り。



「環境がそうさせたかもだけど、君自身も、君を殺したんだ」

「……全部、当たってます」



悔しかった。

初めて会った人に、全部を見透かされて、自分でもわからない心の奥底に入り込んでくるのが。

……ううん、怖かった。

だってこの人が、


初めて、本当の私を見ている気がしたから。