腹黒王子様は、孤独なシンデレラに愛を抱く。

『僕が不在のうち、生徒会に用事がある方は生徒会副会長の冬月泉に要件を伝えてください』



そのためにいたのか、と納得してると、冬月さんは階段を降りた。

わざわざこのために、とも思った。



「じゃ、行こうか、蓬さん」

「……はい」



なるほど、“表”では『蓬さん』なのね。

まあ、私は裏でも表でも『翠さん』だけど。

いつ誰が裏切って情報を売るかわからない。

裏でも徹底しなければ。

階段を降りて、体育館から出る。



「翠さん、さすがですね」

「何がー?」



理事長室まで向かいながら、話をする。



「さすがの笑顔と言いますか。何にでもすぐに対応できる力、羨ましいです」

「そう? 君だって上手いほうでしょ。階段上がってからずっと笑顔だったの気づいてない?」

「え……私が、ですか?」



まさか、と思った。



「“俺”はしっかりと自分を真正面から見ている。でも君はどう? 自分を見失っている。それは、辛いものじゃない?」

「……皆、そう言うんです」