腹黒王子様は、孤独なシンデレラに愛を抱く。

「ダル。また今度会議やり直しかよ。あいつそろそろ追放だな」

「……そろそろ? あいつ、まだなんかやってたのな?」

「綴!」

「やべ」



こいつら、いったい何隠してる?

泉のほうに視線を向けると、泉も“知らない”と首を横に振った。



「お前ら何隠してんの。綴、お前蓬に仕事投げたことわかってんだからな。許してもらうなら今のうちだぞ」

「え、いや、その」

「はよ言え」



言ったら許してやる、という気持ちで言った。

それは蓬にもわかったのか、顔を青くさせた。



「綴、裏切らないよね?」

「綴、俺を取るよな?」



蓬と綴の取り合いで睨み合う。

綴は居心地が悪そうな顔をした。



「だぁー!! 蓬、お前も腹くくれ。翠、ぜってー蓬責めんなよ」

「そんな、綴!」

「わかった」



綴が口を開いた瞬間、蓬が綴の口を塞いだ。



「んぁ? なにふんだ、蓬!」

「言わないって約束で仕事やってあげたでしょ! もう二度としないわよ!」

「それは無理。でも言わねえと俺の首飛ぶって」

「言ったら……するわよ」



何か脅し文句でもあるのか、耳元で蓬が何かを囁いた瞬間、綴は顔を真っ青にした。



「ま、待て蓬、なんで知ってんだ!?」

「なんでって、反応見てたら一発よ。ぜーんぶ言っても私は別に構わないけど?」

「……翠、聞かなかったことにしてくれ」



うわ、こいつ蓬に脅されて主人捨てやがった。

てか蓬の手のひらで転がされてるのダサっ。



「早く言えって」

「「「……」」」



三人とも沈黙して、俺はついに堪忍袋の緒が切れた。



「あー、そう。じゃあ蓬持ち帰るわ」

「へっ、え!? ちょっ、翠さん!」



もういい。蓬のこと壊す。

どうせ吐くことになるんだし。