蓬、まだ引きずってんのか。

やっぱもっと甘えるように言わなきゃな。

そう思った瞬間、綴に睨みつけられた。



「お前今、なんて思った? これは実物見なきゃわかんねぇ痛みだ。本当はお前のそばにいたいと、本当はずっと一緒にいたいってさ」

「え、マジ? マジ!? 嬉しすぎ……」

「そういうとこだ」

「はぁ?」



俺は“普通”でいるだけなんだが。



「そうやって軽く流すから、お前の癖を知ってる蓬は言えなかったんだ。自分は相応しくないなんて気持ち、お前だったら『そんなことない』って甘い言葉で封じるだけだろ」

「……」



まさに、その通りだった。

さすがに、図星突かれたなぁ。



「だからもっと───」


───ガッチャン!!!



綴の言葉を遮り、大きい音が響いた。

すると玄関から、青い顔をした和葉と、ヘラッとした橙華が見えた。



「おい和葉、どうした? なんでそんなに……」



綴が和葉の肩に触れようとした瞬間、和葉が崩れ落ちた。

そして、大泣きし出した。



「私は、なんてことを……!! 大事な主人のこと、何一つ、わかっていなかった……!! ごめん、ごめん、蓬……っ!!」

「え、なに? 蓬がどうした?」



和葉がこんなに号泣するなんて、初めて見た。

さっきまで一緒にいた橙華にもわからないのか、怪訝そうな表情をして和葉の背中を撫でていた。



「和葉、何があったか話せ」

「……これを、見たほうが早いです」

「ん?」



渡された、一通の手紙。

そこには、【橙華へ】と記されていた。



「いやこれ橙華宛じゃん。勝手に読んでいーの?」

「……蓬様は、絶対に自分から言わないと思います。きっとこれは、墓場まで持っていくつもりだったんだと思います」

「わかった」



ただ橙華宛ということもあり、橙華に手紙を渡した。

橙華は頷き、手紙を開いた。