【side翠】




「翠、いつまでこの家にいるつもりですか」

「知らね」



俺は家……寮に帰れずに泉の家に入り浸ってた。

当たり前だろ、蓬を傷つけて『大嫌い』まで言われたんだ。帰れる勇気が出ない。



「本当なんでそんなに臆病になったんですか? 勘弁してください。早くお帰りなさってください。蓬様も心配しますよ」

「無理無理無理」


───ピンポーン。



インターホンが鳴り、泉はげんなりしていた。



「誰です? もう夜の8時ですよ」

「俺」



鍵で入ってきたのは綴だった。

なんだよ、蓬が心配してきてくれたのかと勘違いした。



「おい翠」

「なんだ? 綴も早く帰んなきゃ、和葉が心配すんじゃねーの」

「和葉なら九条家の掃除に行ってる。で、橙華いる?」

「橙華? 橙華なら……あー、そういや和葉から電話かかってきたから屋敷行くとか言ってたな」

「二人して不在か……」