「お姉ちゃんどうしたの? 暗い顔してる」
「……なんでもないよ」
心配させないようと意気込んでいたのに、早速気づかれてしまった。
下を向いていると、橙華が手を握ってきた。
「何か辛いことがあったら言ってね。私、絶対お姉ちゃんの味方だから」
「ふふっ、可愛い妹がいてよかった」
「ふざけないでよ!」
頬を膨らます妹。
血を繋がっていても、全てが違う。
持ってるもの全てが。
「ほら、二人三脚だよ。絶対優勝しよう。私たちの絆、見せつけてやろう!」
「わかったわかった」
本気で取り組む姿も、可愛くてしょうがない。
たぶん後で告られるだろうから、怪しい奴は記憶しておかないと。
『それでは、二人三脚を始めます。選手は並んでください』
アナウンスが流れ、私と橙華はレーンに並ぶ。
「お姉ちゃん、脚痛かったら言ってね? 私のことだとすぐ我慢するでしょ? お昼も食べ損ねたし、あんまり無理しないでよ」
「わかってるって」
こんなに優しい妹がいるなんて、私は本当に恵まれてる。
「ねえ橙華……」
「なぁに?」
その眩しい笑顔に、私は日陰だと実感した。
「今、幸せ?」
「当たり前だよ! お姉ちゃんのおかげっ! 私、誰よりも幸せ!」
私は、幸せだ。
こんなに優しい妹に恵まれて、こんなに愛されてる。
幸せだからね、私。
『紐は結びましたか? 位置について……よーい、ドン!!』
スタートと同時に、橙華と足を出す。
息がピッタリで、一人で走っているようだった。
『おおっ!? 九条姉妹が順調一位です! あのピッタリさ、さすが双子です!!』
「当たり前でしょ!」
橙華が、こっちを向いて笑顔を見せた。
私も、笑顔を見せた。
でもその瞬間……。
橙華の笑顔が、一瞬曇った。
「っ……」
私が想像するのは、程遠いと、実感した。
どうか“あれ”が、橙華に見つかりませんように。



