腹黒王子様は、孤独なシンデレラに愛を抱く。

ニヤッと笑う男子に、記憶なくなるまで殴ってやろうかと思った。

思想が丸見えだ、このクソ野郎。



「っ……」



しまった、膝、擦りむいた……。

赤い血が流れる膝。

久しぶりだ、血を流したのなんて。



「蓬さん怪我したんすか!? 運びますよ、ほら手貸して!」

「えっ、ちょっ……!」



手を掴まれて、肩に手を置かされる。

肩を組んだ状態で、歩こうとしてきた。



「っ……」



どうしてわからないの? 嫌がってるのに。

もう少し、周りを見てよ。



「───待て」

「え」



……こうなるから、嫌なのに。

なんと、あのときと同じように翠さんが現れた。

デジャブだ、もう嫌だ。



「僕の婚約者なので、僕が連れて行きます」

「えっ、あっ、はい……」



有無を聞かないように私を男子から奪った。

その瞬間、体がフワリと浮いた。



「「「「「きゃぁぁああああ!!!!」」」」」



嘘でしょ……。

大歓声が湧いた理由。

このバカな男が、お姫様抱っこをしてきたからだ。



「翠さん……?」



あまりの怒りに血管が浮いた。

目立つのは嫌だってわかってるくせに、なんでこういうことをするの?



「脚痛いんだろ。大人しくしろ」

「え……?」



なんだか、いつもの翠さんと違った。

目が黒くて、まるで、生気を感じない。

見えない“誰か”を睨むような、そんな感じだった。