「───いい加減に、黙れ」



拳をギュッと握りしめた。

父親の腹に拳を入れ、強制的に黙らせる。

震えている拳を押さえつけ、口を開いた。



「あなたたちの悪いところは、人を表面でしか判断せず理解もしようともしないところよ。それさえできずに経営者を名乗るな」



空気に気圧されたのか、ついに黙った親ども。

私は、親たちを置いて部屋を出た。



「うっ、くっ……っ」



拳を握りしめて、涙を堪えていたつもりだった。

なのに、涙が出てしまった。

手で拭っていると、温かい腕が後ろから抱きついてきた。



「頑張ったな」



優しい声のせいで、もっと泣いてしまって。もう、声が堪えきれなくて。



「ううっ……っ。うぁぁん……!」



翠さんは、子供のように泣きじゃくる私を抱き抱え、外に用意してあった車に乗り込んだ。

なんで泣いているのか、わからなかった。

なぜか、涙が出てて……。



「本当は、愛して欲しかった……!」



口から不意に出た言葉が、それが、本心だと気づいた。