「親らしいこともしたことないくせに。いつ愛してるって言ってくれたことがあった? どうせ私は出来損ないで、落ちこぼれの娘よ!!」

「橙華!」



ナイフを床に投げつけて、橙華は席を立った。

そのまま扉を雑に開け、階段を登っていってしまった。

私は、呆然とその背中を見るしかできない。



「橙華……」



また、守れなかった。

私はいったい、何してるんだろう。

橙華を守ると、なんのために奮闘してきたんだろう。

一番の出来損ないは、私だ。

反論も、反抗もできず、橙華を言い訳にする負け犬。

それでも私は。



「蓬、怪我してないか? まったく、あの落ちこぼれがっ!」

「……大丈夫、です」



どうして、何も言えないんだろう。

我慢することが、橙華を守る唯一の行いなんだろうか。

私は……馬鹿だ。

守ると言って、詭弁しか言えない、行動できない。

結局……私は無力だ。

もう、どうすればいいの……。