その瞬間。



「っ、ゔ……!!」



気づけば頬に痛みが走って、私は倒れていた。



「ッ、カハッ……! げほっ……!!」



唇が割れて、血の味がした。

気持ち悪くて、血を吐いた。

顔を上げると、そこには今一番会いたくなかった人がいた。



「お、とう、さま……っ!」



怖かった。初めて見る、本物の目。

愛情なんて欠片もない、冷たい瞳。

その目を向けられて、私は気づいた。

橙華を免罪符にして、恐怖を感じないようにしていただけだと。



「蓬、あれはいったいなんだ!!」

「っ、い゙……!」



倒れたまま足がお腹に直撃した。



「ほら帰るぞ!! 恥をかかせやがって!!」

「申し訳ありま、せん……」



私はお腹を抑えて立ち上がった。



「っ」



私が息を呑んだ先には、桜小路白斗がいた。

うそ……。

私は恐怖に身がすくんだ。