「本当は蓬のこと、心配だったんだろ。蓬だって、あんたのこと大切に想ってる」



目覚めたとき、扉のところに橙華がいて驚いた。

翠さんが言ってくれたことが本当だけど、橙華が信じてくれるとは思えない。

案の定、橙華は怒り出した。



「……私のことを、『大切に想ってる』? 何よそれ……! 私は毎日蓬と顔を合わせる度に比べられて、何をしてもバカにされて……! 恵まれたあんたなんかに、私の気持ちはわからないわよ!」



本当に、私は何もわかってなかったんだ。

そう理解した、橙華の言葉。

そうだよね……比べられてバカにされてきた橙華は、原因の私なんて───。



「うん、わかんない」

「っ、は?」



え?

橙華の声と、心の中の声が重なった。

翠さん……いったい何を言う気?

首を横に向けて二人のやり取りを聞くことにした。