蓬は赤い頬を持ち上げて笑った。



「ううん……辛い思いをしたのは、橙華だよ。ごめんね、私がもっとちゃんとしてれば、あのとき守ってあげれてれば……」



初めて見た。

安心したような、本当に幸せそうな蓬の笑顔。

泉と綴も微笑んでいて、すれ違い事件は終わりに見えた。

だが……。



「蓬、水を差すようで悪いが、これからどうしたい?」

「えっ……?」

「二人の誤解も解けたんだ。もう婚約する理由ないだろ」



蓬は目を見開いた。

そして、モジモジして……。



「まだ……私は翠さんの隣に立つ資格、ありますか……?」

「ッ」



なんだ、この可愛い生物。

そう思い、泉たちがいることも忘れて蓬を抱きしめた。



「わっ、翠さん重いですよっ……」

「このくらい許してくれ。1週間泉に止められてたんだ」

「え?」

「翠!!」

「ヤベ……」



ついうっかり口を滑らしてしまって、蓬は困惑、泉は鋭く睨んできた。



「ど、どういうことですか……? 止められてたって……」

「翠、あなたのためを思って言ってたんですよ。それを台無しにして……計画ってものを知らないんですか」

「え? 計画?」

「泉……お前も人のこと言えないだろ……」



主人である自分とそっくりの泉にため息をつきながら、蓬に向き直った。