腹黒王子様は、孤独なシンデレラに愛を抱く。

橙華の口が、あんぐりと開いた。

そっくりな目も、大きく見開いて。



「もちろん、決まったことだからと反対された。『例外を許すわけにはいかない』ってね。それでも蓬は諦めなかったんだ。しかも最終手段として、『 橙華の代わりに私が留年する。フィルテ金を失ってでも』って言ったんだ」

「……う、そ……」



本当に、あのときは驚いた。

出来損ないの妹なんかのために、自分を削るなんて。



「面白そうだったから留年は取り消し。その代わりに、目をつけてたんだー」



橙華が震えているのをいいことに、口を開いて喋る。



「それほど、蓬は君のことを大切にしてたんだ。君を守るために親に従順なフリもして。僕が九条家に行った日のこと覚えてる? あのあと蓬、大泣きしてたんだよ。『何もできなかった』って」

「っ……!」



本当は、死ぬほど自由に生きたかったはず。

心を閉ざす前に、幸せを感じて欲しかった。