腹黒王子様は、孤独なシンデレラに愛を抱く。

「そ、それは……親とかが自分たちのためにお金を出してるんでしょ。落第して留年なんて、世間体を気にしたんでしょ……」

「違うだろ。あんな親たちがそんなことのために金を出すか」

「……綴」



いつの間にか綴が保健室に入ってきていて、橙華を睨んだ。

橙華は目を泳がせながら、口を開いた。



「そんなの知らない。私は別に、留年だってなんだってしてもいい」



ハッキリ言って、蓬が不憫でしかない。

蓬がしてきたこと、留年を取り消しさせていることは生徒会の耳にも入ってきていた。

まあ実際、点は十分足りているから留年はさせないとなっていたが、本当に去年は危なかった。



「去年、君は留年だと決まったとき、蓬はどうしたと思う?」

「……」



眉を寄せて睨んできた橙華。

その睨む目が蓬にそっくりで、蓬を思い出した。



「ほんっと、会議に入ってきたときは驚いたよ。君がそう決まったとき、会議室に乱入してきてね。頭を深く下げて頼んだんだ。『留年だけは勘弁してください。大事な妹の未来を守ってください』って」

「……」