【side翠】




「ごめんな、蓬───……」



ぐったりと倒れた蓬をベッドに寝かせる。

もっと早く、動いていればよかった。

だが、俺はこの約一週間、何もしてこなかったわけじゃない。



「翠、準備は概ね整ってます」



保健室の扉が開き、泉が入ってきた。



「あーあ、ちょっと懲らしめにするくらいにしようと思ってたけど……───俺の大切なものまた壊しちゃったから、俺も全部壊そ」



蓬の頬を触りながら言うと、泉は呆れたように笑った。



「こんな腹黒い奴に好かれるなんて、蓬様は可哀想ですね」

「ははっ、可哀想? ま、今更拒んだってもう離してやんないけどねぇ」



もう俺は、完全に蓬に堕とされてんだ。



「ほら、これ」

「ん? ああ、サンキュー」



泉から投げたのは、USBメモリだった。

それを受け取り立ち上がった。



「はーあ、本当は蓬を追い詰めた奴なんか助けたくないんだけどねー。でも、蓬が望むなら助けなきゃ。……ねぇ、橙華ちゃん?」

「っ……!」