結婚が、一週間後に迫った日のことだった。

非通知から、電話がかかってきたのは。



「非通知……?」



電話に出てみと、溢れてきたのは。



《蓬》

「っ、え?」



───翠、さん……?

なん、で?

だって、連絡先はブロックして、削除して……。

っ、まさか。

非通知で、かけてきたの……?



《やっと出た。蓬、婚約破棄ってどういうこと?》

「ど、どういうことも何も、私には新しい婚約者が現れたので、契約に則り婚約破棄を……」



言葉が、喉まで出かけた。

本当は、ずっと一緒にいたいと。

でも、覚悟を決めたのに。



《俺は蓬のこと、諦められない》

「っ……」



やめて……何も、言わないで……。



「私は、これでいいんです……っ! なのでもう、忘れてください……」



罵っていいから……何してもいいから、揺すらないで……。