【side和葉】




私は、小さい頃から蓬に仕えてきた。

だからこそ、誰も見たことのない蓬も知っていた。

近くで見てきたからこそ、伝わってきた悲痛な心。

橙華を守るために、どれだけ自分を犠牲にしてかたか。



「結婚なんて、したくない……したくない!
───翠さん、会いたいよぉ……!」

「っ……」



痛々しいどころじゃない、心からの叫びだった。

蓬がここまで感情を出したのは、初めてだった。

加賀美翠……そんなに、蓬の心を開いたの?

私でも、開けなかったのに。



「翠さん……っ、会いたい……!!」



私は、何してるんだろう。

大事な主人の本音を引き出せなくて、大事な主人の人生を変えてしまった。

でも、まだ私にもできることがある。



「私は、最後まで───……」