腹黒王子様は、孤独なシンデレラに愛を抱く。

「わかっているならいいの。いい? 立派な男の子を産むのよ。私だって女しか産めなかったんだから」

「は、はい……」



男とか、女とか。

もう、嫌だ。

全て投げ出して逃げたい。



「これも全部、ぜんぶ……バチだ……」



独り取り残された部屋で、ポツリと呟いた。


───『もっと俺のこと頼ってよ』


ごめんなさい、翠さん。

もう、頼ることはできません。

私はきっと、二週間後には汚れているから。



「っ、会いたいです……っ」



やっとわかった。

どれだけ、翠さんのことが好きだったか。

どれだけ好きで、惹かれていて、愛していたか。

会いたい、会いたい。



「望んだものなんて、叶わないんですね……」



夢って、儚いものだ。

今まで心を鈍らせて生きてきたけど。

翠さんのことに関しては、鈍らせられないみたい。



「結婚なんて、したくない……したくない!
───翠さん、会いたいよぉ……!」



自分の全ての気持ちが、言葉になって部屋中に響いた。