そのあと、ベッドの横のサイドテーブルに、置き手紙を置いておいた。
そして、ブレスレットも。
「本当に、ごめんなさい……っ!!」
私は荷物を持って、家から走り出た。
タクシーに乗って、涙を流す。
あんなに、優しくしてくれたのに。
抱きしめてくれたのに。
私に、幸せを、頼り方を、甘え方を教えてくれたのに。
私は、本当の気持ちを、翠さんと同じものを、返すことができなかった。
「忘れなきゃ、いけない……よ」
忘れなきゃ、いけない。
あの優しさも、愛も、温かさも。
死ぬまでの時間、あの人と過ごすことになる。
大っ嫌いな九条家に、命を捧げることになる。
でも、私が女主人になれば、橙華は解放される。
好きなことをして、過ごすことができる。
学校に言って、橙華の内申点は普通の子と同じにしてもらっている。
テストも毎回上位だったし、社会に出るときに有利だろう。



