「あ、蓬お帰り〜」
「……ただいま、です」
寮に帰って来るのも、今日で最後。
本当は、抱きつきたかった。
『助けて』って、喉まで出かけた。
でも、言わないし、言えない。
……最後の一日だ。
悔いのないように、翠さんと過ごそう。
「翠さん……抱きしめて、くれませんか……?」
「っ、は?」
最後だから甘えること……いいよね。
最後だから、何されてもいいです、翠さん。
「……もう夜だけど」
「……だから、言ってるんですよ」
「ッ……」
翠さんが息を呑んだ音がしたと思ったら……。
「んっ、んぅっ……」
今までとは全然違う、甘くて、強くて、熱いキスが降ってきた。
それと同時に、お姫様抱っこをされて。
いつの間にか、寝室にいた。
「っ、んぅっ、翠さ……っ」
「ッ、顔赤くして、名前呼ぶな……ッ!」
翠さんの熱い目と合った瞬間───。



