『辛いとき以外にも甘えていーよ』

『好きな女泣いてたら、泣き止ませるのが男ってもん』

『愛を知らない? なら、俺がわからせてやる。俺がどんだけ蓬に魅了されてるってこと』

『キスしたいからに決まってんじゃん? ほんと可愛い』

『もっと俺のこと頼ってよ』


───『俺がいつだって支えるからさ。いつだって頼ってよ。頼り方や甘え方を知らなくても、俺が教えてあげるから。もちろん、幸せもね』


あんなに優しくしてくれた翠さんを。


『マジ、可愛すぎ』

『恋愛的な意味で、好きだって言ってんの』


あんなに愛を伝えてくれた翠さんを。


───裏切った。



「……明日には帰ってくると思うから……」

「ちょっ、蓬!!」



私は和葉の言葉を無視して、タクシーに乗り込んだ。

頬に伝った涙が落ちて、翠さんがくれたブレスレットの宝石についた。