「蓬様……!!」



和葉が走っきて、頬に痛みが走る。



「うっ……!」



平手打ちをされて、頬を押さえる。

和葉の目は、涙で濡れていた。



「なに、してるんですか……! 蓬様には……蓬には、翠様がいるじゃない……! どうして、自分から……!!」



ああ、そういうことかと、頭で理解した。

私は震える唇で、言葉を返した。



「いいの。橙華が幸せなら、それでいいの。今までやってきたことの罪が、罰として帰ってきただけよ」

「蓬……」



和葉に呼び捨てにされるなんて、いつぶりだろう。

そんなくだらないことを考えながら、思考は止まっていた。

翠さんに、会いたい。