腹黒王子様は、孤独なシンデレラに愛を抱く。

「では、蓬を婚約者……いや、妻として話を進めていいかな? 白斗君」

「っ、え?」

「はい。イレギュラーがありましたが、母体となる方がいるなら誰でもいいです。ありがたい」



ちょっと、待って……。

“妻”……!?

じゃあ、まさか……。



「お、お父様、妻って……」

「何言ってる? 経営が傾いていると言っただろう。すぐにでも家長を交代するつもりだ。蓬は白斗君が言った通り、母体となればいい」

「……っ、わかり、ました……」



私……こんな人に、初めてを奪われるの……?

この人に、全てを捧げなきゃいけないの?

嘘って、言って……っ。



「では、結婚の件はこちらで進めておく。二人の部屋を用意しておく。そこに今日は泊まるといい。和葉、準備しておけ」

「は、い……」



うそ……嘘……っ!

嫌だ、嫌だ……。

こんな、父親たちと同じような年齢の人と、結婚する……?

身体まで許して……この人と、生涯暮らすの?



「蓬、今日は翠君に挨拶をしてきなさい。寮のこともいい。ただ、世間に言うなと釘を刺しておきなさい」

「は、い」



私は、ゆっくりと部屋から出た。