「大樹ー!?お前来てるならさっさと来いよ!」


グラウンドからの大声に目を向けると、同時にこちらを見上げた旭陽と視線が合った。

少し不安そうな表情をした旭陽に、私は大丈夫との意味を込めて手を振る。


「やっべ、じゃあゆっくりしていってね。体調も気をつけて」


詳細は知らないはずだけど、やんわりと笑った彼に、優しさを感じる。

入れ違い様に戻ってきた莉音ちゃん。


「私、自分のためだけに旭陽に近付いたけど。巻き込んじゃってそれが後悔だったけど。
もしかしたら、旭陽のためになれてたのかもしれない…。」


試合が始まって、楽しそうに野球をする旭陽の笑顔に少しだけ、安心をした。

莉音ちゃんは、私の手を握って微笑む。


「きっとなれてるよ。あんなに楽しそうなんだもん。」


念願叶った野球観戦は、大輝くんのおかげもあって少し救われた気持ちにさせてくれた。