新しくなった教室に入りぐるりと見渡すこと2秒。


「(あ、いたいた…)」


探していた人物を見つけた途端、騒がしく動き出す心臓を誤魔化すように、私は大きく深呼吸をした。


「よし…!」


勇気を振り絞り震える手に力を込める。

そして、底抜けに明るい声で呼びかけた。


「旭陽!同じクラスー!よろしくね!」


呼びかけたのは、明るい短髪を細めの束でセットしたチャラめ男子。

三浦みうら旭陽あさひ

そんな彼が、元々吊っている目尻を細め、訝しげにこちらを見るので、私は少し体を強ばらせた。


威圧的なんだよなぁ……。

そんな心が悟られないように、私は笑顔を作る表情筋に力を込めた。


「お前、なんつー髪してんだよ」


私のガチガチの心とは対照的に、ゆるり言葉が返ってきて、ふっと力が抜ける。


「ちょっと、イメチェン?でも結構いけるでしょ?」

「知るかよ」


先程までの緊張が解けた私は、小さく笑って窓際の一番後ろという特等席に座る旭陽の前の席へと腰を下ろした。


「(よっし、ミッションクリア!!)」


心の中でガッツポーズを決める。

実は家が近く、幼稚園時代から幼馴染の私達。


なんと、今の会話、3年ぶりなんです。

高校2年生、記念すべき1日目。


訳あって、私「旭陽と仲直りする」ために頑張ってます。