トイレから出ると飯田が心配そうな顔で待っていてくれた。
青ざめた杏奈を見て真剣な表情に代わる。

「ねぇ、もしかして生理来てないんじゃない?」
耳元でささやくように質問されてドキリとする。

実はここ3ヶ月ほど生理が止まっている。
それは晃司との別れが原因だと思っていた。

あんな男だったけれど好きなことには変わりなかったし、気が付かないうちに精神的に追い詰められているのだろうと。

だけど今回の吐き気で悠長なことは言っていられない気持ちになっていた。
「どうしよう……私……」

「大丈夫だよ。近くの薬局で検査薬を買ってくるから、ここで待ってて」

飯田はそう言い残すと、青ざめている杏奈をベンチに座らせて薬局へと向かったのだった。