出産は想像以上に痛みを感じるものだった。

人生始めての出産を無事に終えた杏奈はグッタリと体中の力が抜けて横たわっていた。

ベッドの隣には付き添ってくれた稔がいる。

杏奈の手をギュッと握りしめて目をうるませながら「すごいな」と、繰り返していた。

自分はそんなにすごいことをしたんだろうか。
出産が当然のことだとはとても思えないけれど、今は意識が霞んでいる。

「元気な女の子ですよ」

看護師につれられてやってきた我が子はとても小さくて、胸の上で抱くととても体温が高かった。

生まれたての赤ちゃんは信じられないくらい小さな手を広げて周囲を探っている。

その顔は杏奈によく似ていたのだった。