「杏奈?」
隣にいる稔が心配そうに声をかけてくる。

なんでもない。
大丈夫だから。

そう言って歩き去ってしまいたかったけれど、体が動いてくれなかった。
「なんだよその腹。もしかして妊娠してんのか?」

晃司が遠慮なく近づいてくる。
杏奈はとっさにお腹をかばいながら後ずさりしていた。

「そっかー。俺と別れてショック受けてると思ってたけど、すぐにこの男とヤッて子供作ったのかよ。あ、もしかして俺と付き合ってるころからの関係とか?」

「お前、杏奈の元カレか」
晃司の言葉で事情を察した稔が杏奈の前に出た。

「別に今ごろどうこうしようなんて思ってねぇよ。妊婦に興味もねぇしな」
晃司の言葉はチクチクと刺さる。