最低な元カレにフラれたらイケメン医師に成長した幼馴染からの溺愛がはじまりました。

この年になってまだ両親におびえているなんて情けないけれど、事情が事情なだけに仕方なかった。

怒られるだけで住めばいいけれど、繊細な母親は倒れてしまうかもしれない。
そうして電車を乗り継いで降りた先の風景に懐かしさを感じて杏奈は目を細めた。

小さな駅の中は人がひしめき合っていて、駅から一歩外へ出るとバスやタクシーが乗客を待っている。

電車酔いしなかった杏奈はそのままタクシーに乗ることにした。
「どこまで?」

運転手の男性にそう質問されて杏奈は少し考え込んだ。

自分が生まれた産婦人科へ行こうと考えていたのだけれど、あそこは大きな病院だから誰かに会う可能性があることに気がついたのだ。

会社の人にバレたくなくてわざわざ地元へ戻ってきたのに、これじゃなにをしに戻ってきたのかわからない。

自分の行動に苦笑いを浮かべて、杏奈は地元密着型の小さな婦人科の名前を上げたのだった。