「なんで入って来ないの?」

見上げるとそこには鈴原くんが。


「いつもの癖で…ここで聴いちゃった」



「はは。″いつも″ね」

鈴原くんは少し笑ってから

「中入ったら」

そう言って私の腕を引っ張った。



私はドキドキしながら音楽室へ入る。


音楽室へは授業で何度も来たことがある。
でも、こんなに緊張するのは初めて。


「そういえばさぁ」

私の緊張なんて関係なく、鈴原くんが喋る。

「今日なんか雰囲気ちゃうね。髪型かな?」


ドキッとする心臓。
今日は朝から髪型の事をよく言われるなぁ。


「その…寝癖がひどかったから…」

ようやく出た言葉がこれ。
しかもゴニョゴニョ小声過ぎて聞こえているかも謎。


「いいやん。似合ってる」

そう言いながら、鈴原くんは私のポニーテールに触れた。
優しく微笑む顔。

髪から鈴原くんの体温が伝わってきそうなぐらい、私はドキドキが止まらない。

昨日から距離感が近いよ!!
距離感に耐えられない私はパッと離れた。


「ほんでさぁ」

ピアノの方へ向かいながら喋り出す彼。

私はドキドキがとにかく止まらなくて、自分にヤキモキ。

改めて鈴原くんを見ると、背が高くてスラッとしている。
180センチぐらい?
顔もかっこいいし、どうしてこんな人と私が今2人でいるんだろうと思うと住んでいる世界が違いすぎているような気がして、場違いな自分に情けなくなった。