この森での自宅を他人に開放するのは,初めてのこと。
私は家へと踵を返しながら,未だ小さく燃える塊を見つめた。
「それなぁに? 焦げてる?」
「飼育してた兎の皮よ。昨日の夜ご飯だったの」
「兎……食べてる人いるの? 私も食べてみたい!」
思わぬ返しに私は呼吸を止める。
「ふ……いいけど,"それ"は止めた方がいいわね」
命の燃える匂いを鼻から追い出して,ピシャリと水をかけた。
同時に遺骨を隠すため鉄の板をゴンと置くと,しゅうと最期の音を漏らして,その存在は私たちの頭から消えていく。
「あ,魔法……すごいのねお姉さん。さっきだいぶ使ったでしょう」
ぽわんとした暢気な言葉に私はぎょっとした。
「さっきって?」
慎重に尋ねるとその返答はあっけらかんと返ってくる。
「花火のこと。もしかして他にも使ったの? 気付かなかった。
私,花火を魔法で1から作るなんて思ったことなくて,感動しちゃったんだよっ!!」
つい口をつむって,間を置いてしまった。
作業行程を見られたわけじゃない,打ち上げた花火も火薬もほぼ完璧だった。
(なのに,どうして魔法だと分かったの?)



