(何しに来たの? この子…)
放っておくと勝手に死にそうな,危うい子。
私の知ったことではないけれど。
「ほら,気はすんだ? あなた迷子なんでしょう。後ろを振り返って真っ直ぐ40分歩けば外に出られる
わ」
こんな森奥まで目的もなく,よくも1人で来れたもの。
「あっほんと……!? ありがとう!」
すっかり気を許した口調と表情。
にこにことそれを向けられる。
「でも,あの……ごめんなさい。帰る前にご飯だけ食べさせてくれない……ですか?」
しゅんと下がった眉。
40分と言う言葉を聞いて,腹の虫は耐えられないと気付いたようだった。
気付けば日も高い。
外に出たときの小雨は,この子が現れた時には唐突に止んでいた。
「……はあ,着いてきなさい」



