たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~


「古いわ。エヴィー。ついでに水と火については間違ってる」

「え?」

「魔力にはもっと沢山の可能性があるの。私達に発現させることが出来るのは,実はそれだけではないのよ」



(何を言っているのかいまいち分からないって顔ね)



「例えば,私がさっき間違いだと言った水。私達は水を発現させているのではなくて,水を発現させるための(モト)になる材料を発現させているの」



ーぴちょん。

1滴の水が,私の人差し指から机に落とされた。



「この素,見つけただけでも90以上あるわ。素に文字を割り振ったから,式を組み立てればレシピにも表せる。それを頭で覚えてもらうのが座学よ」



本当は"魔力解放の儀"なんて必要ない。

それでも行われるのは,自分達に出来ることが火や水や金属の発現だけだと言う思い込みがあるから。

そして数の多いレシピの中から,それだけをしようとするからだ。

とは言え厄介なことに,この素,元素には目に見えないものが多い。

その点で,発現できる素のどれがどれなのかを教えるのには適していると言える。



「同じ水でも,皮膚が溶けるほどの火傷を負わせられるもの。発現した途端蒸発したり空気に触れたりすることで毒になるもの。色々出来る」



エヴィーがごくりと自分の手のひらを見つめて喉をならした。