通学すらしていないと言うエヴィーは,それでも確信して答える。
(あの頃,彼女は30代と若く,定年まで続けると息巻いていた。知識欲は泉のように溢れ,私との約束を軽視してもいなかった)
なのに。
(教職にすらついてないとなると……)
考えたくない。
その身だけでも無事で,自由に過ごしていると信じたい。
「エルさん……? 師匠。どうしたの? なんだか泣きそうよ」
私ははっとして顔をあげた。
「なんでもないわ。いいから座りなさい」
「う,うん」
意識を戻して,私はエヴィーを椅子に座らせる。
「エヴィー。ここで教わったことは友達と共有すると言ったわね……もし機会があれば,他の人にも教えてあげなさい。もちろん間違った使い方は許さないで」
「うん,約束する」
「学校の授業より私を選んだこと,後悔はさせない。魔法においては私が最先端よ。
ーーーーじゃあ……始めましょうか」
そうして私はエヴィーへ余すことなく知識を与えることを決めた。



