「この山道を毎日来るの?」
「うん。出来れば1日中見てもらいたいの」
「早朝と夕暮れ以降はだめ。いつも一緒のお友達はいいの?」
「大丈夫! 寂しいけど,いい師匠が見つかったとだけ言ってあるから。教えてもらったことは皆と共有するの」
しばらく考えたのち,私はくるりと振り返った。
(仲間にも私との約束を守ってる)
私の存在を明かさず1人でやって来た姿勢は認めてもいいかもしれない。
「おねえさ……」
「毎日新聞を2社分,それからどんなに多くて重くても,持ってきてと言えば買ってくること。定期的にうちにある商品を売りに出掛けること」
言っているうちに,どんどんその子の目が輝いていくのが分かる。
どんなことでもどんとこいといった若さゆえの輝き。
(本気のようだけど,いつまで続くかしら)



