「エヴィー。私はね,なにもしていないのよ。本当に。でも気味の悪い人は,話を聞かないから力を持つの。秩序も倫理も無視してしまうから無敵なの。今さら話し合うことなんてない。私はただ,反撃を繰り返すだけ」
平穏に,たった独り生きていられれば良かっただけ。
唯一,売られた先で犯した殺人を,公正な手続きに乗っ取って裁いてくれると言うなら,自ら出頭しただろう。
けれどここ迄出来てしまって,これ以上償うことがあるかと言われれば分からない。
何故私が自ら向かい,許しを乞わなければいけない?
敵意を向けたのはあちらなのに,エヴィーの中継ぎを,何故私が,弁明をチャンスのように思わなくてはいけないの?
奪われた権利を取り戻すことも,一つの身体には重すぎたこの数年の罪を償うことも。
最早誰にも出来ないというのに。
全ての感情を溶け合わせ,弱火でコトコトと煮込んでいた透明の鍋が。
もうすぐ沸騰するのが分かる。



