皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

(もしかしたら〝あれ〟が少しは効果を発揮しているのかしら。眠りが浅いと言っていたから、ぐっすり眠れているのだとしたらうれしいな)

じつはエリーヌは四日目の夜からリオネルの枕に、ちょっとした仕掛けをしていた。連日忙しい彼が、少しでも体と心を休めるようにと。

ダリルから本を借りてきてからというもの、エリーヌは食事のとき以外は読書の毎日。食事の際に部屋を出るだけで、ほぼ自室と寝室だけで過ごしている。
そうして自由に過ごさせてもらっているエリーヌからの、ささやかなお礼でもあった。

(せっかくだからもう少し寝かせてあげたいけど、公務もあるから起こしてあげたほうがいいわよね)

昨日は『時間がないから』とリオネルは朝食を抜いたが、今日はそうさせるわけにはいかない。
エリーヌはおそるおそるリオネルの肩を揺すった。


「陛下、陛下」


何度か呼びかけたそのとき、リオネルの瞼がようやくぴくっと動く。


「陛下、そろそろ起きませんか?」


もう一度肩を揺すると、リオネルはゆっくり瞼を持ち上げた。エリーヌに焦点を合わせ、リオネルがハッとしたように目を見開く。