皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

「本当に綺麗な星空ですね」


ふたり並んで見上げた夜空には、数えきれないほどの星が瞬いている。こうして広い空を眺めると、ミュリエルは争いの絶えない地上の自分たちの存在がひどくちっぽけに思えた。


「ああ」


そう答えたきり、ふたりとも押し黙った。
今にも降ってきそうな星たちだけが、マティアスとミュリエルの秘密の逢瀬を見ている。

(このまま時が止まってしまえばいいのに)

すぐそこに迫る別れが、ミュリエルを切なくさせる。しかし、せっかく会えた彼に悲しい顔は見せたくない。


「今、天使が通りましたね」
「天使が通った?」
「不意に沈黙が訪れるのは、天使が通ったからだそうです」


不可解な顔をするマティアスに笑いかける。


「へえ、天使がね」
「そうなんです、天使が」


揃って星空を見上げ、天使の痕跡を探す。

ふたりは、どうか早く争いが終わり、再び一緒に暮らせるようにと祈らずにはいられなかった。