皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

「いいえ、大事に至っては困ります。ちょっと貸してください。聖なる癒し(ホーリーヒーリング)


ミュリエルはマティアスと石段に腰を下ろし、彼の傷に自分の手をかざした。この程度であれば、軽く念じるだけで傷口は塞がる。


「さすがミュリエルだな。ありがとう」
「あまり無理はしないでください」
「俺を誰だと思ってる? 見くびられては困るな」
「マティアス様がお強いのは知っています」


彼の手首に嵌められたバングルには、金色の魔石が輝きを放っている。


「でも私は心配なのです。今だって、もしも見つかったら――」
「わかってる」


マティアスはミュリエルの唇に人差し指をあて、言葉を止めた。


「だが、どうしても会いたかったのだ。許せ」


どちらからともなく重ねた唇が熱を帯びていく。
引き裂かれたふたりは、これからいったいどうなるのか。その不安を少しでも和らげるためにキスに没頭した。