皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

押し問答をしてニコライを困らせるわけにもいかず、結局エリーヌは二冊だけ持ち、残りをニコライに運んでもらうことになった。

そうして出入り口まであと少しというときだった。エリーヌたちを背後から追いかけてくる足音に気づいて振り返る。

(あの方はたしか……)

昨日の婚礼の儀で見かけた顔だ。


「妃殿下、お待ちください」


声の主がエリーヌたちに追いつき、目の前で足を止めた。


「オスカー大公殿下、どうかされたのですか?」


ニコライが彼に向かって問いかける。
上皇の年の離れた弟。婚礼の儀で、エリーヌを見て椅子をガタンと鳴らした人物である。

たしかあの儀のあと、エリーヌに面会を求めていたとか。


「初めまして、エリーヌと申します。本を抱えたままなのをどうかお許しください」