皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

迷わず真っ赤な粒をひとつ手に、取り口に入れる。張りのある皮は歯ごたえがあり、中から甘い果肉が出てきた。

(おいしい!)

顔を綻ばせて堪能した直後、大変なことを思い出した。サクランボには種がある。

(どうしましょう。陛下の前で口から物を吐き出すなんてできないわ。恥ずかしいし)

大好きなものを食べられた喜びが一変してしまった。口の中で持て余した種を舌で転がしながら考えあぐねる。

陛下が見ていない隙に出してしまおうか。いや、でも吐き出すこと自体が問題ではないか。
目をあちこちに泳がせ右往左往する。

そしてエリーヌは、ある結論に達した。

(……飲み込むしかないわよね)

満を持して種を口の奥へ転がし、堅い異物をひと思いにごくんと飲み干す。――と同時にむせ込んでしまった。


「どうした、大丈夫か?」


慌ててナプキンで口元を押さえる。