翌朝、エリーヌが目を覚ましたとき、リオネルの姿はすでになかった。

眠りが浅いと言っていたが、やはりよく眠れなかったのだろうか。エリーヌが隣に寝ているせいで余計に気になっていたのだとしたら、とても申し訳ない。

エリーヌのほうはといえば、なかなか寝つけないともぞもぞしていたのは最初だけ。いつの間にか深く寝入り、目覚めたときには一瞬ここがどこだかわからなかった。
不思議な夢を見たせいか、結婚した事実が頭から抜け落ちていたのだ。見慣れない景色が目に入って混乱した。


「エリーヌ様、ご無事でよかったです」


朝、部屋にやって来たアガットは、エリーヌの姿を見てほっとしたようだった。
ソファに座るエリーヌの前に跪き、手をぎゅっと握る。

おそらく多くの人たちが、何事もなく初夜が敢行されたか気にしているに違いない。命の危険はもちろん、世継ぎ誕生を願って。


「心配をかけてごめんなさい」
「いえいえ、エリーヌ様は謝らなくていいんです」